Investigation into Overseas Market
2024年度(秋学期)経済学部「海外マーケット調査」が開講しました。

2024年12月9日

明治学院大学経済学部は、2024年度秋学期より「海外マーケット調査」の特別講義を開講しました。同講義の開講目的は、講義を通じてグローバルな環境及び国際ビジネス、それを取り巻く政治経済、歴史、文化、教育、観光など、幅広く取り上げ、それらに精通する講師を招いて講義を進めていきます。
 本学経済学部は、これまで近隣にある複数の国及び地域の大使館や代表處に依頼をし、講義を開講してきました。昨年度に引き続き、2024年度も台北駐日經濟文化代表處に講義開講の支援をお願いしました。同組織は日台関係における台湾側の代表機関で、本学と同じ港区白金台にあります。特別講義は、その同代表處及び代表處教育部より推薦を頂いた講師を招いて台湾や日台関係に関する特別講義を開講します。以下は、これまでの講義概要、講師の紹介、講義の様子になります。

9月25日 ガイダンス
2024年度の担当教員より、同講義の日程と開講目的に関する説明があった。本年度は台北駐日經濟文化代表處(台湾)より特別講師の派遣を依頼、台湾及び台湾を中心とした中華文化圏の経済環境、日台間の貿易など国際ビジネス、それを取り巻く政治経済、歴史、文化、教育、観光など、幅広く取り上げ、それらに精通する講師を招いて講義を進めていく旨、説明があった。

  • 10月2日 台北駐日經濟文化代表處 黄冠超 教育部部長
    テーマ「台湾教育交流の回顧と展望」
    同代表處の黄冠超 教育部部長より、お話をうかがった。最初に、同代表處は経済、文化を中心とした日台交流の台湾の窓口であるとの紹介があった。次に、日台関係について、歴史的な観点から、植民地統治時代に教育の面で貢献した日本人教員の存在や殖民地開拓に貢献した日本人技師として八田與一、鳥居信平などの人物名が挙げられた。それらの基礎があって現在の台湾が築きあげられたとのことであった。後半は、同代表處が実施している台湾留学の奨学金についての紹介、参加学生からの台湾に関する質問に対応して頂いた。
  • 10月8日 台北駐日經濟文化代表處 李逸洋駐日代表による雙十節の冒頭挨拶
    10月8日に台北駐日經濟文化代表處東京事務所主催による中華民国113年、雙十節を祝う式典が都内ホテルで開催された。2024年度の海外マーケット調査の担当教員が式典に参加、関係者に挨拶と本学経済学部講義開講のお礼を伝えた。写真は、雙十節にて講演を行う李逸洋駐日代表
  • 10月9日 ファブリッジ 御堂 裕実子合同会社代表 本学経済学部卒業生である御堂氏による特別講義。大学を卒業して数年後、留学先としてサイコロに幾つか候補先を記載、転がして出てきた行き先が台湾だったとのこと。そのような偶然が台湾と関わるきっかけだったという。日本のことをいつも気にかけてくれる台湾人の存在に気づいたが、東日本大震災では日本に最大級の寄付をしてくれた。そこで台湾に対して、自ら「謝謝(XIE XIE)台湾」という企画を立ち上げ、台湾との交流を継続しているとのことである。なお、日台間の交流を進める事業をしたいと考えた末、「(日台間の)「すばらしい」と「橋」“Fabulous Bridge”を築くことを意図して」で合同会社を立ち上げたとのことであった。
  • 10月16日 林佩芬 講師 中国語文学会 会長
    テーマ「台湾と言語」
    台湾は日本の十分の一程度の大きさしかないにもかかわらず、他民族社会が共存しているという。また、そこには地理的な背景だけではなく歴史的にも影響を受けているとのこと。そのため、台湾の出身地や世代によって母語や得意言語が異なるという。講義では、講師自ら代々伝わる家系図を事例にとって、家族の代々の母語や得意言語等が異なるなど、台湾で用いられる言語が多様的であることを紹介した。なお、近年は、台湾の教育現場において、言語や文化の多様性を尊重する方針が進められているとのことであった。
  • 10月23日 日本大学商学部 張喬森教授
    テーマ「Taiwan and Semi-conductor industry「台湾と半導体産業」」
    世界で注目されている台湾の半導体産業に関して、日本にとって重要な海外市場の一つである台湾の政治、経済、人口などのマクロ環境の概要から、世界の中での台湾の半導体産業の立ち位置、米中対立との関係性について国際政治経済学の視点から紹介があった。また、台湾最大(世界最大級)半導体メーカーであるTSMCの事例を通じて、企業の国際ビジネスが日本などの世界経済に与える影響などについて、台湾人学者の視点からの分析について解説してもらった。
  • 10月30日 東京大学 鳥居徹名誉教授br> テーマ「台湾におけるインフラ技術の発展」
    1895年より半世紀に及ぶ日本の植民地支配が続いた台湾において、日本統治下において数々の社会インフラが構築された過程について紹介があった。同講義では、鉄道、上下水道、電力、灌漑、糖業に関する事例が取り上げられた。植民地統治は1945年まで続いたが、その頃からすでに80年を迎えようとしている。その一方で、その中には補修や修繕を経ながらも、現在も活かされている施設も少なくないとのこと。また、それらは将来も地域の発展を支え続けていけるとのことであった。
  • 11月6日 新潟産業大学 詹 秀娟(セン シュウケン)名誉教授
    テーマ「台湾の歴史・食文化・日台交流」
    台湾は複数の国による統治時代を経たことで、台湾は庶民生活にも影響をもたらした。 具体的には、台湾の公用語とされている中国語(台湾では「華語、国語、中文など」)以外にも様々な言語が各地で話されているだけではなく、多元文化が形成されているとのことである。
    講義では、台湾の近現代史について、日本の植民地統治時代から中華国民党が台湾に移転してきた専制時代。その後、台湾で総統選挙が行われるようになった現代史に焦点を当て、台湾が民主化に至った現代史にについて、自らの体験を交えて話が行われた。後半は台湾の文化、特に食文化事情に焦点をあて、食や果物、菓子など、観光や日台交流にも影響を与えていることなど、多数の写真を交えながら紹介があった。
  • 11月13日 チャイナエアライン
    テーマ「About China Airlines」
    チャイナエアライン 東京支店旅客営業部張継文部長、神崎真弓氏、向禹丞マーケティング部長により、同社の概要と日本市場のマーケティングについての話をうかがった。また、外資系航空会社の事例紹介がテーマだったので、キャリアセンターに声をかけ、エアラインコースで学んでいる学生にも講義を開放した。
    同社の正式名称はチャイナエアラインで台湾のフラッグキャリアである。また、同社はFSC(フルサービスキャリア)であるが、子係会社のタイガーエアラインは、LCC(ローコストキャリア)など、複数の航空会社を運営している。講義の中で、ここ数年は新型コロナ感染拡大で経営が厳しい状況にあったが、その間、CARGO(貨物輸送)に取り組むことで、事業を維持して耐え忍んだとのことであった。
    最後に、参加学生より、外資系航空会社への就職に関する質問が挙げられた。チャイナエアラインは日系エアライン会社とは異なり、多くの外資系企業と同様に定期採用は行っていない。したがって、必要に応じて人材募集を行っているので、同社URLや就職関連サイトなどから情報を収集する仕組みになっているとのことであった。
  • 11月20日 國府俊一郎 大東文化大学 経営学部教授
    テーマ「ジョブ型社会における就職とインターンシップ—台湾と日本の比較から―」
    國府教授より、「ジョブ型社会における就職とインターンシップ」というテーマで特別講義を頂いた。近年、日本の大卒の就職活動においても、特定の専門を評価して採用する「ジョブ型雇用」が注目されるようになったとの紹介があった。 それに伴って、インターンシップを絡めた新卒採用の活動が活発化する動きが見られるようになったとのことである。実は、近隣の台湾では、原則としてジョブ型雇用が普及しており、インターンシップを積極的に活用、採用に繋げる企業も多く見られるという。本講義では、台湾の事例を紹介しながら、今後、日本の大卒を対象とした就職活動について、将来の採用・就職活動がどのように変化するのか示唆を行った。
  • 11月27日 台湾観光庁、藤村みなみ講師
    台湾観光庁の藤村氏より、台湾の観光について講義があった。なお、本学学生の就職先として人気のある旅行業界との関連から、今回もキャリアセンターに声かけを依頼し、本学学生に対して講義を開放した。
    藤村氏は、台湾の観光はもとより、最新情報を交えながら、台湾の若い世代の中で流行っている日本のメディアやカラオケソングなどについてお話があった。
    後半は、本人が台湾に留学したきっかけ、台北師範大学で中国語を学んだこと。後に、在台日系旅行会社へ就職した経験、帰国して台湾観光庁東京事務所で働いていることについて教えてくれた。そこでは、台湾人は「日本人」に優しい一方で、外国人であったとしても仕事に求めるレベルは高く、「台湾社会」には二面性があることについて、自らの海外生活の体験を語った。
  • 日本統治時代に台湾の産業の礎となった土木・水利建設に貢献した歴史人物、八田與一と鳥居信平の両氏の孫と記念写真。
    10月30日 中:鳥居徹 東京大学名誉教授、右: 八田修平 台湾世界遺産登録応援会理事長、両氏との記念写真撮影。左:本学経済学部 西原博之(2024年度海外マーケット調査 担当教員)
  • 12月9日 吉村剛史講師 The News Lens JAPAN編集長
    テーマ「台湾の先端技術と日台連携協力の可能性」
    吉村講師より、ジャーナリストの立場から日台連携や協力関係の在り方について講義を頂いた。 近年、先端半導体の製造で存在感を増す台湾について、TSMC熊本工場の事例を取り上げられながら日台連携についてのあり方について紹介があった。他にも、日台連携の可能性として、AI、サイバーセキュリティ、ドローン技術など、多分野に及ぶとのこと。その一方で、日本側の台湾への理解の浅さが課題となっていると指摘した。講義では、日台連携を進めていくにあたって、近現代史を振り返りながら、台湾の複雑な国際的地位について理解を深めていくと同時に、今後は、先端技術を軸にした日台連携や協力関係を推進していくべきとのことであった。